そのひとのめ

なんとなくの毎日を、書きたいときに、書けるだけ。

些か、過去に靄

学生時代に、何回か自転車で旅をしたことがあった。

2週間ほどかけて、何人かの仲間とともに遠くまで行ったものだ。

基本的に、夜はテントで狭い思いをして過ごした。

朝は不思議と目覚めが良くて、朝露の中で静かに一日が始まることが多かった。快適すぎなかったことが、そのころはよかったのかもしれない。

朝ごはんは必ず食べて、一日がしっかりと始まる。今思えば、間違いなく規則正しい生活だった。

来る日も来る日も、日中ゆっくり自転車に乗って、お昼に美味しいものを食べる。

午後も少し走って早めに風呂に入ってから、地元のスーパーで見つけた変な食材を買い込む。

雨の日は屋根を探しながら、前輪の巻き上げた泥の含んだ水を受ける。

晴れの日は汗がアスファルトを濡らして、人の気配のない道で回したペダルがそれをどんどん遠ざける。

後ろを振り返るたびに、このあとの人生でここに来ることがあるのかを想像して、不思議な気分になった。

 

いろいろなところに行った割に、再び訪れたところは多くない。

避けているつもりはないけれど、行っていないところがあればそちらに行ってしまう。

いつかどこかを再び訪れたときに、覚えているかはわからない。

覚えてなかったら、それはそれで良いような気もする。

忘れてるってことは、また行きたがってるってことだったりして。

人間案外、自分の思う以上に柔で剛なのかしら。

 

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ちりちりあたま

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