↓ ふたつめ
朝起きて窓を開けると、外はすっかり白く染まっていた。
もともと関東民だったので、実は雪かきらしい雪かきは経験がない。
備え付けのスコップで、意気揚々と繰り出す。
雪は乾いていて想像よりもずっと軽かったが、なにしろ量が量だ。
一通りかきだすころには、身体はしっかりバテていた。
一帯を片づけると、近所の方から温かいコーヒーと野菜ジュースをいただいた。
あたたかい。
コーヒーをいただいてから、一気に白く包まれた街を歩いた。
雪はほぼ止み、うっすらと日差しも覗く。
視界が一気に白くなって、やはり目が追いつかない。
バスはチェーンを巻いている。
場所によってはロードビーティングが間に合っていないので、その境目で大きく跳ねたり、音がしたりするのがなんとなくおもしろかった。
言わずとも、小樽には坂が多い。
ただでさえ多い急坂は、雪でさらに通行が難しくなる。
不慣れな足取りでまだまだ進みが悪いが、慣れたら慣れたで転倒するのだと思う。
変な話だが、いつ転倒するのか少し楽しみだ。
「坂が多い」というよりは、「平地が少ない」あるいは「ない」という方がいいかもしれない。
信号は例によって縦型が多く、電球、樹脂灯器もいくつか見かけた。
ゆっくりとバス通りを下って、運河まで降りてきた。
次第に晴れて、青に白がよく映える。
今更だが、冬の小樽は初めてだ。
雪は、本当にいろいろなものを変えてしまう。
夏場に見た北海製罐の第三倉庫も、氷柱がぶら下がるなど雰囲気を大きく変えていた。
除雪車が当たり前のように市内を走り、運転手がいろいろな人と挨拶している。
雪かきのときもそうだったが、雪が絡む地域の繋がりは、なかなかおもしろい。
除雪車が入っていない道は、本当に通るのが難しかった。
地元の方が歩いた微かな跡を頼りに、慎重に歩く。
必死に足元を見ているうちに、すっかり日が暮れていた。
北一硝子の3号館を通抜けて、小樽駅方面へ向かう。
アーケードにも雪が吹き込んで、屋根の下まで積もっている。
夏に見かけたアローラロコンも、心なしかそれっぽい。
人通りの少ないアーケードを抜けて、駅に着いた。
ここから登る元気はないので、帰りはバスで戻る。
坂の上には学校がいくつかあるので、意外と本数は少なくない。
バスに乗っている間に、また雪がちらついてきた。
今日はもともと雪の予報だったが、この土地の天気予報は、あまり当たらないように思う。天気自体が不安定なのもあるかもしれない。
もしかしたら「雪」という予報も、晴れ間の間に雪が降ったら「雪」となるのだろうか。
あれだけてこずっていた白い斜面を、バスは勢い良く駆け上がって行く。
玄関の前に着くと、雪で扉があかなくなっていた。
朝にあれだけ骨が折れたのに、諸行無常も甚だしい(にこにこ)
とりあえず通り道だけ確保して、続きは次の日にすることにした。
吐く息は白いが、室内は暖かい。
給湯器の重低音を聞きながら、ゆっくりと暇を繕った。
↓よっつめにつづく