そのひとのめ

なんとなくの毎日を、書きたいときに、書けるだけ。

北方行って奇譚 -5-(F)

↓ よっつめ

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予報では雪だったが、なんだかんだで今日も太陽が顔をのぞかせている。

昨晩は雪も降らなかったようなので、今日は駅までゆっくりと歩いた。

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普段あまり意識していない靴だが、雪のある地域ではとても重要だということが分かった。

水が入らないだけで散策は本当に楽しくなるし、内側が暖かいとストレスが格段に少ない。

底が厚く多少の歩きにくさはあるが、雪の上では程よい没入感が逆に良い。

購入して本当に良かった。

歩き回ってもまだまだ変わりないので、来年以降もお世話になると思う。


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メルヘンの交差点から、三本木の坂を上る。

一桁代の傾斜がかわいく見える。そこは少し慣れたのかもしれない。


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南小樽駅の少し手前で振り返ると、建物の隙間から防波堤灯台が見えた。

ここを離れるときは、あの間を通ることになる。

今の自分には、とんでもなく「狭く」感じた。


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今年で営業を終えられた小町湯さんにも行ってみた。

道内で最古参の銭湯だが、時代の流れか閉業されたとのこと。

佇まいは寂しげでありながらも、たしかに小町湯であった。

ほんとうにおつかれさまでした。


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小町湯を後にして、近場を歩く。


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ターミナルは静まり返り、日本海の荒天を知らせるアナウンスが繰り返しなされていた。

いろいろなものを乗せたらべんだあは定刻通りに港を離れ、荒ぶる日本海を進む。

持ち帰るものと置いていくもの、日本海に捨てていくもの、いろいろなものが乗っている。

 

入港は、2.75時間遅れの正午となった。

あたりに雪はない。

後部甲板に残るかすかな白い凹凸が、みるみる減っていくのを感じた。


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新潟からは新幹線を使った。

出発してすぐに眠りについて、目覚めると東京に入っていた。

例によって重く感じるスーツケースを、両手で持って階段を下る。

 

人波を懸命にかわしながら家路をなぞり、相変わらずスーツケースの似合わない部屋の扉にひとり吸い込まれた。

妙に静かに感じられる室内で、こちらでも瓶の半分ほどになったインスタントのコーヒーをすする。

コップの底にこびりついた粉に、湯を足してかき混ぜた。

ゆっくりと、丁寧なつもりで、必要以上に。

 

(F)