↓ひとつめ
冷え切ったドアノブを押し出して、ターミナルを出た。
路肩には雪が積まれているが、まだ根雪とは言えない。
前回は部屋まで歩いたが、今回は雪に加えスーツケースもある。
おとなしく、タクシーで部屋まで移動することにした。
交差点を曲がるたびに、傾斜で身体がシートに押し付けられる。
部屋の近くで降りると、周囲は雪が目立つようになっていた。
坂の街とはいえ、全ての坂にロードヒーティングが入っているわけではない。
早朝で凍結した路面が足元を狂わせる(ヒヤリハットn回)
部屋に着き、とりあえず荷物を置く。
水抜きをしてあった室内は、思いのほか暖かかった。
給水を復旧して沸かした熱湯に、瓶の半分ほどになったインスタントコーヒーを溶かす。
猫舌でちびちびすすっていると、朝日がちかちかと窓枠を照らしはじめた。
朝も早かったが、到着したばかりでアドレナリンが出ていたのと、晴れは貴重なのではないかと考えたのもあって、出かけることにした。
根雪でないが、駐車場などにはうっすら積もっている。
晴れ間なのもあって、視界全体がやけに白い。
もともと私は明順応が弱いので、慣れるのに少し時間がかかった。
近所を一通り巡って、天狗山へ登ろうと考えた。
歩いている途中でロープウェイが明日からと知ったが、とりあえず山麓の駅まで登ってみる。
歩道には雪があるところも多い。
標高が上がるにつれて、積雪の量が増えてゆく。
根雪と言ってよいかどうか、微妙になってきた。
港とここまで違うものかと思ったが、よく考えると標高差は100m以上ある。
小樽という街を、少し感じた。
山麓駅を過ぎ、少し下る。
郵政カブが。急坂を下ってゆく。
バス停まで、地元の方と少し話した。
今年は特に雪が少ないが、夜からの雪で根雪になりそうということだった。
バスに乗って、小樽駅周辺まで降りる。
明るくなってよく見ると、やはり雪は少ない。
みっくみくにしてくれ。
トマソン。
はみだせ緑。
こういう植生は、大変好み。
香深は礼文島の地名。あっちから来たのだろうか。
港周辺は、まだ雪が少ない。酒豪か。
各所に雪囲い(冬囲い)が見られる。
歩き出しそうなものばかりだ。
北一硝子でインクを買い、駅前をふらついてから部屋に戻る。
気づくと夕刻で、気温がどんどん下がっていく。
ちょうど氷点下になったところで、部屋に着いた。
夕食を済ませ、買ったばかりのインクで筆を執る。
悴む手を温めながら、ゆっくり、ゆっくりと文字をつづった。
水抜きを済ませ、床に就く。
寝袋とタオルケットを総動員してなんとか寒さに抗おうと思ったが、中に入ってみると以外にもあたたかい。
かさばる上着を脱いでから寝袋にもぐりこみ、外で雪が降る中で眠りについた。
雪の降る音が、静かに、確かに聞こえた。
↓ みっつめにつづく