サンタクロースを見た。
午後6時。
金曜の夜に飛び出したスーツの人波に、流れとは反対方向にゆっくり歩く真っ赤な人影がよく映える。
人波には見えていないのか、見えないことになっているのか。
真正面から来てだんだん大きくなるシルエットに、すこし身が竦む。
映画でよくある、子供同士がやる度胸試しみたいに思えた。
例によって、顔は見えない。
顔も、赤いのだろうか。するとかなりこわい。
自分もまっすぐに歩いて足音が聞こえそうな距離になったとき、浮遊感とともに世界が回った。
気づけば、電車のシートに座っている。
外はすっかり暗い。
前に抱えた左手に、腕時計が見える。
午後6時。
金曜の夜は、いつでも、何回でも、楽しいものだ。
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たまには正夢も見たい。
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